【工房DX編3】LINE、FAX、電話でバラバラな注文…。チーズ工房の「納品書作成・手作業地獄」を自動化した話

チーズ職人への道

今回は、多様な注文方法による受注漏れ、注文の手書き管理、納品書作成の手間など、複数の悩みを改善するため、Googleサービスを最大限に使った注文管理システムの構築です。前回は売上集計に関して、会計ソフトに悩まされましたが今回もネックな問題の一つとなります。現場の切実な声も柔軟に対応したここにしかないシステムの立ち上がりのストーリーをお楽しみください。

納品書作成 〜わかりづらすぎてミス多発〜

前回、前々回の工房DX化を買われてか、製造業務をクビになったか、どちらかわかりませんが、納品書作成業務を任された私。(もちろんチーズの製造は続けさせてもらっています笑)
早速、例の会計ソフト(工房DX編2に登場)を使って納品書を作成していくのですが、、、

前提として、私の工房では以下のようにさまざまな媒体からバラバラに注文を受けています。

  • HP(オンライン注文)
  • FAX
  • 電話
  • LINE
  • Instagram
  • ふるさと納税 などなど
    (つまり、注文方法が統一できていません)

また、納品方法は、近くのエリアであれば冷蔵車による配達、その他は宅配による冷蔵発送です。ありがたいことに地域に愛されるチーズ工房であるため、配達での納品もかなり多いです。

そして、熟成チーズはもちろん、フレッシュ系のチーズも製造しています。フレッシュ系のチーズは賞味期限が近いので、「午前中にチーズを製造し、午後にできたてを配達する」というスケジュールを組んでいます。人数も少ないので、製造担当者が大体3時間以上かけて配達もこなします。

こんなことが言いたかったのではないですが、つい大変さを伝えたくなってしまったのでこのままいきます。なぜ配達の話をしたかというと、その配達に間に合うように納品書を準備しなければいけないのです。つまり、フレッシュチーズを午前中に製造しながら、その日の配達の納品書を作成し、配達の準備をしなければならないのです。

「それならば、前日までに準備しておけばいいじゃないか」

こんな疑問が生まれると思いますが、チーズの製造、熟成管理、発送、掃除、毎日この作業に追われ、そんな時間はないのと、前日に夜にも次の日の注文が入ってくるのです。(「こんな直前の注文、断ればいいのでは?」と思いましたが、これこそが地域のレストランやホテルから愛される所以かも知れません)

複雑な注文方法たち(LINEやFAX)を見ながら、一度エクセルで作った表に手書きで写し、それを使いづらい会計ソフトに打ち込んで納品書を作る。

……それは、ミスしますよね。

  • 納品日のミス
  • 数量のミス
  • 注文FAXの紛失
  • Instagram注文の確認漏れ

このようなミスがどうしても多発してしまいます。これまで慣れていた責任者が担当していたから、数件に抑えられていたものの、初めての私にとってはどうしたらいいかわからない、まさに絶望的な状況でした。

会計ソフトにどうしても触れたくない私のアイデア

今回の課題は複数あります。

  • 納品書作成にかけられる時間の少なさ
  • 注文方法の複雑化による受注漏れ
  • 注文の手書き管理による納品ミス
  • 複雑な会計ソフトによる納品書作成の手間、余計な時間の消費

おそらくこのような地場かつ小規模な業者であれば同じような課題を抱えているんだろうなと感じました。人手不足や、億劫なシステムのリニューアル、昨今のSNS増加による注文方法の多様化、未知な無料ソフト(OfficeやGoogleサービス)の活用方法など、ならではの悩みだと思います。(地方移住していなければ、当たり前に対応できることだと思ってしまっていたな、と痛感しています)

これらの課題を改善するための施策は、

Googleサービスを使って、コストをかけずに、できる限り、受注から納品書の作成までを自動化する

です。

具体的には、以下の方法です。

  1. (卸先の担当者が)Google フォームから注文を入力
  2. スプレッドシート(受注管理表)に注文が自動反映
  3. 注文内容の確認(自動でメール送信)
  4. 確認と同時に自動で納品日の注文管理表と納品書を自動作成
  5. 納品書の印刷

複数の工程があるように感じるかも知れませんが、実働は、「注文内容の確認」と「納品書作成ボタンの押下」、そして納品書の印刷のみとなっています。注文管理表は、その日の納品に必要な総量を把握するために作成します。

最初からこうできると思ったわけではないです。なんせ私はpythonしか書けないし、データ分析しかやったことがないので、「pythonでウェブアプリ作れたよな〜、注文サイト作って、エクセルを自動処理すればいいのかな〜」と思っていたくらいです。

ここはチーズ製造の片手間に取っていたGoogle AI プロフェッショナル認定証で出会った新たな相棒Geminiに協力してもらって、システムを構築していきました。(海外の人たまに、ジェミナイって呼ぶよな)

「考えるのは簡単 やるのは大変」みんな心当たりあるよね

上のシステムを構築するには、いくつか障壁がありました。

まず、注文方法を変えたくない業者もいるということ。
これに関しては、「納品ミスを減らしたい」という相手のメリットも提示することで、変えてくれる業者とそれでも変えたくないという業者(FAXの注文の業者が多い)がいたので、それはしょうがなく個々で対応し、注文管理表に直接入力する。(工房DX編1で学んだ「相手のやり方を尊重して自分たちの業務を最小限にする」が活きました、またイラッとせずに済みました笑)
そのため、上の方法を少々変更。

  1. (卸先の担当者が)Google フォームから注文を入力
  2. スプレッドシート(受注管理表)に注文が自動反映
  3. 注文内容の確認(自動でメール送信)
  4. 確認と同時に自動で納品日の注文管理表を作成
  5. (FAX注文の内容を注文管理表に転記後)納品書を自動作成
  6. 納品書の印刷

次に、商品が多いこと。
商品が多いと注文時に使用するGoogleフォームはかなり見づらくなってしまいます。そこで、卸先をいくつかにグループ分けをして、それぞれに適したフォームを作成し、同じスプレッドシートにシートを分けて自動反映する仕様に変えました。(そのおかげで、それらを一度全体集計するスクリプトを書く手間が増えました。本当はプルダウンで商品を選んで入力できるようにできたらいいんだけど、無料だから文句は言えない)

最後に、会計士に提出するため、会計ソフトに納品情報は登録しなければならないこと。
これまでは、納品のたびに会計ソフトに登録していたので、納品日と納品情報が紐づいていて、そのデータを元に会計ソフトで月次の請求書を作成していました。今回のシステムを導入することで、会計ソフトに一切触れずに納品書を作成してしまいました。
そのため、月次で納品日と納品情報をまとめたデータを別ファイルで自動集計し、請求書作成前にその月のまとめた情報を集計したファイルから会計ソフトに転記することにしました。ここは結局手入力になってしまいますが、「納品のたびに入力する」か「月に一回入力する」だと差は歴然です。

それでも、月次の総量ではなく、納品日ごとにまとまった請求書が欲しいという業者がいるんですよ〜
(な〜に〜やっちまったな、男は黙って「切腹」、じゃないですけど、毎回納品書は送ってるんだから自分たちで確認して欲しいという具体的な文句はありますが、、)
その方達のために、その月の納品情報をまとめた別ファイルも自動で作成することにしたわけです。

  1. (卸先の担当者が)Google フォームから注文を入力
  2. スプレッドシート(受注管理表)に注文が自動反映
  3. 注文内容の確認(自動でメール送信)
  4. 確認と同時に自動で納品日の注文管理表を作成
  5. (FAX注文の内容を注文管理表に転記後)納品書を自動作成、納品情報を別ファイルで自動集計
  6. 納品書の印刷

……と、様々な現場の「大人の事情」や「ワガママ」をすべて吸収し、Geminiと格闘すること数日。

ついに、「FAXの習慣はそのままに、毎日の納品書作成をワンクリックで終わらせる最強の注文管理システム」が完成しました!

実際の画面と、この(無料という枠の中ではある程度)洗練された受注から納品書作成の動きをご覧ください。

初めてにしてはまあまあ使えるだろう注文管理システムの全容

STEP 1:注文が入ってくる(Googleフォームの画面)※URLを共有すると開けます。
「スマホからポチッと入力してもらうだけ」

STEP 2:受注管理表に自動でまとまる(スプレッドシート画面)
「色んな注文がここに一元化され、進捗を確認済みにするとメール送信と注文管理表の作成が自動で行われます!」

STEP 3:FAX分を追記 & 魔法の赤いボタンをポチッ(自動作成された注文管理表画面)
「今日の配達分を確認したら、このボタンを押すだけ!」

STEP 4:納品書が即完成(自動作成された納品書画像)
「軽減税率にも対応した納品書が、一瞬で同じファイルの別シートに保存!」

STEP 5:請求書作成のための納品情報が一目で簡単チェック
「月末にここを見れば納品方法がすぐに確認できます!」

どうでしょうか。色味や書類、表の体裁は置いといて、見やすく、わかりやすく、簡単になっているかと思います。現在、運用中ではありますが、日々イレギュラーに対応しながらより良いシステムに仕上げています。

終わりに

注文管理システムの構築は、これまでのDX化以上に複数のタスクを繋げて自動化するという試みであったため、正真正銘のDX化と言えるのではないでしょうか。(まだまだ簡単なものですが笑)

作業時間としては、具体的には難しいですが、

「1時間」  →  「3分」

大まかに言うと、これくらいになったかと思います。何よりも、

  • 「人為的な転記ミス、確認漏れがなくなったこと」
  • 「ミスがなかったかというストレスを抱えながら製造業務を行わずに済むこと」

この効果は計り知れないと思います。HPの注文は相変わらず手入力をしているので、ここも自動で反映できたらなと思っています。

工房に来た時にひとまずやりたかったことは完成させることはできました。業務を行う中で、まだまだDX化、電子化できることは思い付いています。例えば、乳量やスターター量の管理、注文管理の完全電子化、温度湿度管理、在庫管理などです。新しいチーズを学ぶことも増えているので、折り合いをつけながらまた進めていけたらと思います。
次回、【工房DX編4】へと続くかも。

ご相談募集中

今回、DX化で最も刺さったのは、

「今は無料で実際に運用できるレベルのシステムを作り上げることができるんだ」

という人手不足、コスト削減に悩まされる現場に優しい朗報です。

もし、この記事を読んでいるチーズ工房はもちろん、カフェ、パン屋さん、職人さんなど、小規模ビジネスのオーナー様で、

  • 「毎日の受注や納品書の作成で、ミスが多発している」
  • 「専用の受発注システムを入れるほど予算も時間はないけれど、手作業を減らしたい」

という方がいらっしゃれば、現場のオペレーションに合わせた「身の丈に合った注文管理システム」の導入サポートやご相談を承っています。

「うちのこの作業、自動化できる?」という段階でも大丈夫ですので、お気軽に[お問い合わせフォーム / ココナラ]よりお声がけください!

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